その昔、
あなたはどんなクリエーターを目指していますかと聞かれたので、
「思いをカタチにするクリエーターです」と答えたらこう言われました。
「みんなそれ言うんだよね笑」
こういう決まり文句のようなフレーズって、
それを使えば誰もがイメージしやすいというか、
伝える側も言った気になるので、当時はわたしもドヤ顔になってたと思うんですが、
「みんなそれ言うんだよね」と言われたおかげで目が覚めたのです。
多くの人に認知されている言葉を使うこと、
これって実はとても怖いことだとわたしは思っていて、
今日はそれにまつわるお話です。
「グッドパートナー」というTVドラマがありました。
竹野内豊さん、松雪泰子さん演じる弁護士さんたちと、
彼らを取り巻く弁護士事務所の仲間がさまざまな事件や問題を解決していく、
ちょっとコメディタッチのドラマです。
その中のエピソードで、
事務所の敏腕弁護士の一人が、
婚活で知り合って初めてお付き合いした女性が結婚詐欺師だと分かり、
失恋とショックで打ちのめされるシーンがありました。
40代のガタイのええおっさんが涙流して泣いてるわけです。
女性秘書が仕事の話をしてもずっと号泣状態。
秘書「辛いんですか?」
弁護士(うなづく)
秘書「仕事で忘れようなんて気にはまだなれない」
弁護士(うなづく)
彼女は、みんなで飲みに行きましょうと誘いますが、
弁護士はいやだ、と泣きじゃくります。
秘書「いやだじゃない!」
一喝する彼女。
秘書「いいですか?よく、悲しみは時間が解決するっていうけど、時間は解決してくれないの」
彼女は続けます。
「その時間の間に、誰かとお話をしたり、何かを体験するうちに、気持ちが収まってくるんです」
すご!!!参りました。
「時間が解決する」
これも決まり文句としてよく使われ、よく聞くフレーズです。
誰かに言ったこと、言われたこと、あるんじゃないでしょうか。
言ってる意味は分かるし、言ってくれた人の気持ちも分かる、
だけど響かない。
今解決する言葉をくれよ!って話ですわな笑
多くの人が共通認識を持つ言葉やフレーズって、
使い尽くされていて、耳が慣れちゃってるんだと思うのです。
初めて聞いた時はおお!って思うけど、
何度も聞くうちに、最近それよく聞くよね、ってなる。
だから伝わらない、その言葉自体には何の罪もないのにです。
言葉やフレーズには、鮮度があるような気がします。
じゃあどうするか。
自分の言葉に置き換えることはできないでしょうか。
一旦その言葉を自分の中に取り入れて、
本質の部分を見つけ、一から言葉を組み立てるのです。
難しい言葉じゃなくていい、長くなってもいい、
自分の中深くに潜って、自分の言葉を見つけたい、
そう思います。
「時間が解決する」
それは「結果的にそうなる」のであって、
相手の気持ちをやや置き去りにしている感じがします。
「時間を過ごすことで気持ちが切り替わる」ことを伝えたかった彼女は、
ちゃんと自分の言葉で彼の心を動かしたのです。
素晴らしい!
耳慣れた言葉がすべて悪いというわけではありません。
共通認識を持つという目的のためにはとても便利です。
ここ数年の間にも、
UI/UX、デザイン思考、LOHAS、SDGs、afterコロナ・・・
わざわざ説明しなくてもみんなが「ああ、あれね」となる言葉たち。
でもわたしはどうも馴染めないのです。
怖いのは、それを使うことで伝わった気になって思考停止することです。
もう一度、それを開封して中身をちゃんと並べて、
自分の中でひとつひとつ確認して使いたいと思います。
あ、ブランディングとか、コンセプトとか、マーケティングなんて言葉も、
きっとまだまだその仲間かもしれませんね。
これはわたしも使いますね反省!
クリエーターは、伝えることだけでなく、
人の心を動かすプロでなければならないと思っています。
人の心を動かす、つまり「感動」です。
出来上がった制作物だけではなく、打ち合わせから交渉、メールのやり取り、フィニッシュまですべて、
お客さまに何らかの感動を与え続けることが、
クリエーターとしての腕の見せどころではないでしょうか。
わたしもまだまだ目指し中。
文章や言葉に関していえば、
伝わり、かつ心に刺さるものを使いたい。
耳慣れた言葉より、
できるだけ未使用で伝わる言葉を探して使いたい。
またはその耳慣れた言葉でさえも、
新しい聞こえ方がするような手法を探りたい。
心に届き、心を動かす言葉を、
今日も自分の中に潜って探す日々です。